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袖ヶ浦キリスト教会
袖ヶ浦キリスト教会について
1993年2月19日
新建ちば115号掲載

宇野武夫

袖ヶ浦キリスト教会
袖ヶ浦キリスト教会

 新建千葉の皆さん、ご無沙汰しております、加瀬沢さんよりご指示の
「第8回千葉県建築士会作品コンクール」で奨励賞を頂いた袖ヶ浦キリスト教会
について報告をさせていただきます。近況報告のつもりで袖ヶ浦市内の近作を
2点だしたものがたまたま賞に入ったようです。
 事務所を開設して早くも5年の歳月が流れました。
開設当初は、事務所としての作品、実績がないので何ができて、
何をやろうとしているのかなかなか理解が得られませんでした。
やはり設計者は作品を通じて自分の考え方を理解してもらう以外に道はないと
再認識して、3年間は人に会わずに初心に帰り一から建築をやる気持ちで
仕事をしておりました。そんな折りに隣りにお住まいの幼馴染みで、熱心な
クリスチャンである富田さんより教会の設計についての依頼がありました。
現在は木更津市内の住宅を改造して教会活動をしているが、会員増加と共に
手狭になり数年前より手頃な土地を探していたがなかなか見付からず、
この度彼のお父さんが土地を提供され教会を建設するとのことでした。
○教会建築について
 教会の設計は、私も初めての経験ですが、日曜日に教会での活動に
参加して島田牧師より設計条件を伺うと共に、他教会の視察をして
教会員の方々と様々な意見交換をしました。又、私の今迄に見たアメリカや、
ヨーロッパの教会の紹介もしました。
 1年前程前にヨーロッパ建築視察旅行をしたときに、コルビジェの
ロンシャン教会の素晴らしさに魅せられて1時間の視察予定を変更して、
3日間麓のホテルから山道をロンシャン教会に通いました。今考えてみると
この時が、教会建築についての最初の出会いであると思います。
その日は、早朝リオン発途中ロンシャン教会を見て深夜パリ着予定の
大変長いバス旅行の1日でした。ロンシャンでの時間は一時間程度で、
三十人程のツアーでしたがバスの出発真際に、海外企画の梅本さんに
無理を言ってバスを下ろしてもらいました。初めての土地で、地図もなく、
土地感もない場所でしたが、カメラ、パスポート、6カ国語通訳辞典などの
入った小さなショルダーバッグひとつで、3日間ロンシャン教会におりました。
幸、ドイツに近い国境の町で、両替のできる銀行が在り、
フランスを手に入れて、数件しかないレストランの叔母さんホテルのある場所を
教えてもらいロンシャンの見える2階の部屋を借りました。
ペンション風でとても優しいシトロエンのスポーツカーに乗った親父さんが
経営をしており、軽装でふらりと現れた日本人に興味があったのか、
とても親切にしてもらいました。ロンシャン教会は小高い丘の上にあり
下の街から歩いて行くと1時間ほどの所にあります。歩いて坂道をのぼって
行くとコルビジェの心憎いアプローチの方法が良く解ります。
上りきり敷地内に入ると木立ちの間から空に向かってするどくそびえる船の
軸先のような姿をかいま見せ徐々に全体が見えてくる手法は、
京都の修学院離宮の手法を思い出させました。教会の内部は非常に静かで、
様々な開口部からの柔らかい光が優しく内部を包み、一人で1日いるととても
気持ちが和み、外部の自然の変化が良く感じられる空間でした。ラツーレットの
修道院の礼拝室よりも優しい空間であると思えました。
庭には、桜があり夕方まで何も食べず教会に通って来る日本の若者に
入口の売店の叔母さんが、内緒だよと僕にサクランボをビニール袋にいれて
沢山くれました。朝から何も食べていない僕はよろこんで食べながら山道を
麓の街に帰りました。

ロンシャン教会
ロンシャン教会

ル・コルビジュ設計のロンシャン教会
ル・コルビジェ設計のロンシャン教会
  ロンシャン教会内部
ロンシャン教会内部
光が美しく、中に居ても時の移ろいがわかる
ロンシャン教会:祭壇
ロンシャン教会:祭壇
ロンシャン村にある教会
ロンシャン村にある教会
丘の上に教会が遠望できる
 
○建築計画について
 話が横道にそれましたが、袖ヶ浦キリスト教会では、
  1 講演会、コンサート等地域の文化活動の拠点になる誰でもが気軽に利用できる教会
  2 履物を履き替えないで土足で使用する教会
  3 田園地帯であるから地域の目印、サインとなる教会
などを皆さんと相談して決めました。当初計画は、牧師館と、別棟の礼拝堂を渡り廊下で連結する
平屋建ての計画でしたが、打合わせを重ねていくうちに駐車場を敷地内に確保したいと言う事になり、
2階建ての計画に落ち着きました。礼拝堂の使い易さからすると牧師館を2階にして礼拝堂を1階に置く
計画になるが、この敷地の軟弱地盤を考えると、とても木造で大スパンの構造計画は無理だとの判断を
して、1階牧師館2階礼拝堂の現在の計画にしました。お蔭で1階は壁が多く2階に大勢の人を乗せても
不安のない構造となりました。基礎は、木造には珍しくPCパイル350φ14mの上に鉄筋コンクリートの
人口基盤を造り木造2階建ての基礎としました。2階は礼拝堂の空間が大きい為、外部に袖壁を設けて
壁量を確保すると共に、屋根トラスは地上で組立て柱ごとクレーンで吊上げる特殊なトラスを開発し
コストの軽減と工期の短縮を計りました。

○建設について
 見積もりを数社取ったが予算に合わず、たまたま牧師夫人が茨城県の実家のご両親にこの話しをした
ところ、篠崎工務店の社長さんが榎本設計時代に担当した、麻生町中央公民館を良く利用されていて、
その設計者なら是非お会いしたいということで話しがまとまり非常に安いコストで献身的に施工を
引き受けてもらいました。

○グランドピアノについて
 教会献堂について神に祈り、篠崎工務店と言う施工者が現れ工事が中間頃まで進んだ頃、教会員は
グランドピアノを授かりますようにと昼、夜お祈りしました。ある時お祈りが天の神に届いたのかグランド
ピアノが教会に届きました。私はびっくりした、人間目標に向かい熱心に祈れば物事成就するものだと
つくづく思いました。後で聞いた話だが、バブルが弾けて東京都内でピアノの生演奏を聴かせていた
レストランの経営者が、店を閉めてグランドピアノの置き場がなく引取り手を探していたとのことであった。

○UCAについて
 現在は、100%CADを導入して新しい設計事務所の在り方を模索しております。事務所名のUは、
向三軒両隣程度の地域を考える事が良い街造りに繋がる道だと考え、UBANのUと宇野のUを
CはCREATE、AはARCHITECTのかしら文字を採り事務所名にしております。新建活動を始めた頃と
違い近頃はなかなか皆さんと建築についての議論もできませんが、共に考え、勉強して建築とまちづくりに
ついての理想をできるだけ実践していこうと日々考え、設計活動をしております。年に何回も会えませんが、
それぞれの会員がそれぞれの地域や、職場で活動することが、又違った意味での新建活動ではないかと
考えております。
 近作は、3月に千葉市山王町に看護専門学校、5月に富津市JR大貫駅前に君津信用組合大佐和支店が
竣工します。

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