≪新建「ちば」 2002.5 163号掲載≫
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健康住宅3題 宇野 武夫 |
平成元年の事務所開設以来、住宅は建築の基本であり、人間生活の中心であると考え、毎年1〜2件
程度の住宅を設計しています。私が住まいが好きで住宅の設計をしていることをあまり周囲の人は
知りません。「何だ?宇野さんも住宅の設計ができるんだ」等と友達にいわれ、「俺だって、住宅の設計を
するよ。もっとも、住宅の設計が一番難しいけど」「だけど、住宅は設計するのも大変だし、気に入った
住宅を造るには時間もかかるから、住宅展示場に行ってハウスメーカーの家を買った方が安上がりで
早くていいよ」「それでも設計したほうがよければ設計するよ。そのかわり設計料がかかるよ」等と言って
設計をすることになるケースが多いようです。私の住宅の依頼者は殆どがハウスメーカーなどの家では
満足できず何とか自分の生活にあう気に入った家を造りたいと考えています。
今回は、この2〜3年に完成した3件の住宅をご紹介いたします。
1件目は、多忙なご夫婦の休養の為の老朽化した山荘建て替えです。2件目は、ハンデイのある
お子さまとの充実した生活を送りたいと、現在のお住まいの住宅を処分され、新たに土地探しからの
計画です。3件目は、現在お住まいの住宅を新婚の息子さん夫婦に譲り、新たに自然の中で奥様と
生活したいとの依頼です。
3件に共通するコンセプトは、「健康住宅」です。プランはできるだけ間仕切りの少ない大きな空間の
ワンルームで、自然の通風や採光を最大限に取り入れた吹き抜けにハイサイドライトやトップライトを
設け、贅沢な光と多くの酸素を与えています。素材はできるだけ自然素材を利用し、特に杉丸太や
杉板を柱・梁・床板・野地板・壁・手摺・階段等の構造材・造作材に多用しています。
天井の高い吹き抜けや、居間、便所等に温水床暖房設備を設けています。
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○ 健康住宅−1 「栗の大木と共生する山荘」 |
細長い南下がりの敷地のほぼ中央に栗の枝振りのよい大木があり、夏日の現調時に全ての計画は
この栗の大木を中心に進めたいと、その場でスケッチをしてプランニングが決定。円形プランの
RC壁構造地下室の上に人工地盤を造り木造平屋建て杉丸太構造。さわら、杉、唐松、檜、けい藻、
鉄平石等の材料を使用。木製建具は地元の建具屋さんと外部にスエーデン製木製断熱窓を採用し
厳しい冬も使用できる山荘とした。
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○ 健康住宅−2 「木造コートハウス」 |
お施主さんは、希望した住宅の建築が可能かどうか2〜3カ所の土地を私に案内し、現地で簡単な
プランニングをし、太陽や、風、将来的な街並み、現在の景色などを総合的に判断し土地を購入された。
南側の道路から緩い勾配のスロープを設け冬の雪日でも安心して玄関までたどり着けるアプローチが
できた。玄関より内部は中庭を中心に居室が配置されぐるりと1周できるプランで、安心感のある大きな
内部空間ができている。
ロフト平面図・屋根状図
配置図・1階平面図
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南側上部より中庭を望む
中庭越しに居間、食堂のハイサイドライトが見える。
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工事中の風景−1
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工事中の風景−2
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計画地 |
君津市 |
敷地面積 |
335.74u |
延床面積 |
159.68u |
車庫 |
14.19u |
構造 |
木造平屋建て
ロフト付き
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施工者 |
(有)篠崎工務店 |
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○ 健康住宅−3 「雑木林に建つ杉丸太の家」 |
M氏御夫妻は、5年前から土地を捜され今回気に入った土地が見つかり設計の依頼となった。
敷地はこの地域には珍しい雑木林で、東側境界線沿いに杉と檜の大木があり、この土地の木を
利用して住まいを造りたいと希望された。木の好きな奥様を中心に木工教室のように大勢の人が
こぶのある檜を磨き、この家の大黒柱となり、茨城から搬入された18mの杉丸太登梁を支え、
居間の中央に先住者の顔をして存在している。
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